こんな変化はありませんか?
犬や猫は、眼に痛みや見えづらさがあっても、言葉で伝えることができません。そのため、飼い主様が普段の生活の中で小さな変化に気づいてあげることが大切です。
「目やにや涙が増えた」「眼が赤い」「白っぽく見える」といった分かりやすい変化だけでなく、「暗い場所で動きづらくなった」「アイコンタクトが減った」といった行動の変化が、眼の病気のサインになっていることもあります。
また、同じ「眼が白い」「眼が赤い」という症状でも、原因は一つではありません。眼の表面に問題があるのか、眼の内部に問題があるのかによって、考えられる病気や必要な治療も異なります。
「年齢のせいかな」「もう少し様子を見ても大丈夫かな」と迷う変化があれば、一度眼の状態を確認してみましょう。
こんな眼の変化はありませんか?
- 目やに・涙が増えた
- 涙やけが気になる
- 眼が赤い
- 眼が白っぽく見える
- 眼をしょぼしょぼする
- 片眼を閉じている
- 眼を気にしてこする
- 暗い場所で動きづらそう
- アイコンタクトが減った
- 左右の瞳孔の大きさが違う
- 猫の虹彩(茶目)にシミがある
ここから、それぞれの症状について考えられる原因や、受診のポイントをご紹介します。
目やに・涙が増えた、涙やけが気になる
「この犬種は涙が多いから」「小さい頃から涙やけがあるから」と、体質によるものだと思われている飼い主様も少なくありません。しかし、涙が眼からあふれる「流涙症」には、さまざまな原因があります。
そもそも「涙」は、眼を守る大切な膜です
眼の表面は、単なる水分ではなく、水分・ムチン・油分からなる「涙膜(るいまく)」で覆われています。
- ムチン:涙を眼の表面になじませる
- 水分:眼の表面を潤す
- 油分:水分が蒸発しすぎないように表面を覆う
これらがバランスよく働くことで、眼の表面が潤い、健康な状態が保たれています。
特に油分は、まぶたの縁にある「マイボーム腺」から分泌されます。水分だけが多ければよいわけではなく、ムチン・水分・油分がバランスよく眼の表面を覆うことが大切です。

涙があふれる原因は大きく2つあります
① 涙の分泌が増えている
眼に何らかの刺激や痛みがあると、涙の分泌量が増えることがあります。
例えば、
- 逆さまつげなどの睫毛の異常
- まぶたが内側に巻き込む異常
- 結膜炎
- ブドウ膜炎
などが原因になる場合があります。原因によって必要な治療は異なり、例えば睫毛の異常が刺激になっている場合には、原因となる毛への処置によって改善することもあります。
② 涙がうまく排出されていない
通常、眼の表面を潤した涙は、瞬きをすることで目頭にある「涙点」という小さな穴へ入り、涙の通り道を通って鼻や口へ排出されます。ところが、この通り道が詰まっていたり、眼やまぶたの構造によって涙がうまく涙点へ流れなかったりすると、涙が眼の外へあふれてしまいます。特にトイプードルなどでは、骨格やまぶたの構造によって涙があふれやすいケースもあります。
涙やけは、見た目だけの問題ではありません
涙やけというと、「白い毛が茶色く汚れて見える」といった美容上の問題として捉えられがちです。しかし、本当に大切なのは、「なぜ涙があふれているのか」を確認することです。
涙があふれている状態でも、涙が眼の表面に適切に行き渡っているとは限りません。また、年齢を重ねることで涙膜を構成する水分・ムチン・油分が減少したり、マイボーム腺が詰まって油分が不足したりすると、涙膜が不安定になり、ドライアイにつながることがあります。
「体質だから仕方ない」と決めつけず、涙やけや涙の量が気になる場合は、一度原因を確認してみることが大切です。
眼が白っぽく見える
「眼が白くなってきたから、白内障かもしれない」と思われる飼い主様は多くいらっしゃいます。しかし、「眼が白い=白内障」とは限りません。
眼の中には、
- 表面にある角膜
- その奥にある前眼房
- さらにレンズの役割をする水晶体
など、複数の組織があります。どの部分が白く見えているのかによって、考えられる病気は異なります。
同じ「眼が白い」でも、どこが濁っているかで原因は異なります。

例えば、角膜が白く見える場合には、
- 角膜の傷
- 脂肪やコレステロールなどの沈着
- カルシウムの沈着
- 角膜ジストロフィー
など、さまざまな原因が考えられます。
さらに、同じ角膜の濁りでも、角膜の表面側から白っぽくなっているのか、内側から白っぽくなっているのかによっても病態は異なります。一方、水晶体が濁っている場合には、白内障などが考えられます。
どの部分が白くなっているのかを、飼い主様が見た目だけで判断することは困難です。「年齢だから白くなったのかな」と思っている変化にも、治療が必要な病気が隠れていることがあります。
眼をしょぼしょぼする・片眼を閉じている
犬や猫が眼をしょぼしょぼさせたり、片眼を閉じたりしている場合は、眼に痛みや違和感があるサインの可能性があります。
原因としては、
- 角膜の傷
- 眼に入ったゴミなどの異物
- ブドウ膜炎など眼の内部の炎症
- ドライアイによる不快感
- 神経の異常
など、さまざまなものが考えられます。
同じ「眼を開けづらそう」という症状でも、眼の表面に痛みがあるのか、眼の内部に痛みがあるのかによって原因は異なります。特に、しょぼしょぼしているだけでなく、赤みがある、涙・目やにが増えている、眼を強くこするなど、複数の症状がみられる場合は早めにご相談ください。
眼が赤い
眼の赤みは、飼い主様が比較的気づきやすい症状の一つです。「結膜炎かな?」「アレルギーかな?」と思われることも多いですが、眼が赤くなる原因はそれだけではありません。
眼の表面に近い「結膜」に炎症が起きている場合だけでなく、眼の内部にあるブドウ膜に炎症が起きている場合(ブドウ膜炎)にも赤く見えることがあります。どの部分に炎症が起きているかによって、病気の重症度や必要な治療も変わります。
そのため、「赤いだけだから」と長く様子を見るのではなく、赤みが続く場合や、涙・目やに、しょぼしょぼするなどの症状を伴っている場合には、一度眼の状態を確認しましょう。
暗い場所で動きづらい・アイコンタクトが減った
眼の異常は、眼そのものの見た目だけに現れるとは限りません。
例えば、
- 暗い場所で動きが鈍くなった
- 夜になると物にぶつかる
- 以前よりアイコンタクトが減った
といった行動の変化が、見えづらさのサインになっていることがあります。
こうした症状では、網膜の病気や進行した白内障などが疑われます。白内障が進行すると、眼の奥にある網膜まで届く光の量が減るため、特に暗い場所では見えづらくなることがあります。さらに視覚への影響が進むと、明るい場所でも見えづらくなり、アイコンタクトが減るなどの変化につながる場合があります。
「歳をとったから動きが鈍くなったのかな」と思われやすい変化ですが、眼の病気が関係している可能性もあります。
左右の瞳孔の大きさが違う
左右の眼を見たときに、黒目の中央にある瞳孔の大きさが違って見えることがあります。瞳孔は周囲の明るさに合わせて大きさが変わりますが、同じ環境でも左右差がある場合には、眼そのものの異常だけでなく、神経などが関係している場合もあります。
「もともとこうだったかな?」と迷う場合でも、以前の写真と比較すると変化に気づきやすくなります。左右差が急に現れた場合や、眼の赤み・見えづらそうな様子などを伴っている場合には、ご相談ください。
猫の虹彩(茶目)にシミがある
猫の眼を見ていて、「茶目のところに以前はなかったシミができている」と気づくことがあります。虹彩にできるシミには良性のものもありますが、悪性の病変(メラノーマなど)との鑑別が必要になる場合があります。
確認するポイントとしては、
- シミができている場所
- 平らなのか、盛り上がっているのか
- シミが広がってきていないか
- 瞳孔の形が変わっていないか
- 左右の瞳孔の大きさに違いがないか
などがあります。
特に、シミが盛り上がってきたり、虹彩が引っ張られることで瞳孔の形がいびつになったりする変化は重要です。また、虹彩のシミは経過を見ることも大切です。気になるシミがある場合には、スマートフォンなどで定期的に写真を撮っておくと、大きさや形の変化を比較しやすくなります。
「病院へ行くほどかな?」と迷ったら
当院で実施した眼科アンケートでは、眼の症状があったときに受診を迷う理由として、「緊急性が分からない」という回答が最も多く寄せられました。実際、眼の症状だけを見て、飼い主様自身が緊急性を正確に判断することは簡単ではありません。
そこで、一つの目安として確認していただきたいのが、「複数の症状が重なっていないか」です。
例えば、
- 涙や目やにが多いだけでなく、涙や目やにが多い + 眼が赤い
- さらに、涙や目やにが多い + 眼が赤い + 目をしょぼしょぼさせて痛がっている
- そして、眼の症状 + 元気や食欲も低下している
というように、複数の変化が重なっている場合には、より早めの受診をおすすめします。

眼の異常から、全身の病気が見つかることもあります
眼は、眼だけで完結している臓器ではありません。眼の赤みや濁り、痛みなどをきっかけに検査を進めたところ、全身の病気が背景に見つかることもあります。
例えば、高血圧や高脂血症などが眼の症状につながる場合があります。また、実際に当院では「眼が赤い」という症状からブドウ膜炎が見つかり、さらに原因を調べた結果、子宮蓄膿症が見つかったケースもありました。
「眼の症状だから、眼だけの問題」とは限りません。
眼の変化に加えて、元気や食欲など全身状態にも変化がみられる場合には、眼だけでなく全身状態も含めて確認することが大切です。
「老化なのか、病気なのか分からない」という方へ
「歳をとったから眼が白くなったのかな」
「暗いところで動きづらくなったのも年齢のせいかな」
このように、眼の変化を加齢によるものと考える飼い主様は少なくありません。実際、当院のアンケートでも、「老化なのか病気なのか分からない」ことを不安に感じている方が多くいらっしゃいました。
しかし、加齢による生理的な変化なのか、白内障や網膜疾患などの病気による変化なのかを、見た目だけで判断することは簡単ではありません。
だからこそ、「年齢だから仕方ない」と決めつける前に、一度眼の状態を確認することが大切です。
まずは当院で眼の状態を確認します
眼科は、専門的な知識だけでなく、眼の細かな変化を確認するための検査機器も重要になる分野です。
当院では、眼科担当獣医師が眼の状態を確認し、
- 当院で診断・治療を進められる状態なのか
- さらに詳しい検査が必要なのか
- 専門医療機関での検査・治療が必要なのか
を判断します。
より高度な検査や治療が必要と判断した場合には、適切な専門医療機関をご紹介します。
「この程度の症状で眼科を受診していいのかな?」
「年齢による変化なのか知りたい」
「今受けている治療でなかなか改善しない」
といった段階でも構いません。
愛犬・愛猫の眼で気になることがあれば、まずはご相談ください。